ノルウェイの森

監督:トラン・アン・ユン
原作:村上春樹
出演:松山ケンイチ/菊地凛子/水原希子
制作:2010年日本
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ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)




広く愛されている小説を映像化するのはとても難しいことだし、その多くは受け入れられずに終わるものだと思っていたけれど、ノルウェイはかなり良い仕上がりで私は好感が持てました。
それは私が村上作品の中ではノルウェイにそこまで思い入れを抱いていないというところが大きいとは思いますが、小説の内容をそっくりそのまま写そうとしてないというのも原因にあるのではないかと思います。


映画と小説を全く同じ物になるように作ってしまうと、映画は小説を超えられないと思っています。けれど今回の作品は、独特な静けさと時間の流れは大切にしつつ、圧倒的なビジュアルの美しさに重点を置いて作られていて、見終わったあともそのひっそりとした時間に沈み込んでいくような感覚がありました。


細かいディテールで言うと、みどりの髪はショートカットであってほしいとか、当時を象徴するような茶色くて古びた喫茶店学生運動なんかはもっとしっかり出てきて欲しかったとか、直子が死んだ後ワタナベくんが行った日本海っぽい映像がちょっと違和感あるなとか、いくつか思う所はあるけれど、記憶に残っているのはそんな些細な事よりも、直子と二人で散歩していた小道の綺麗さや、本を読むワタナベくんとその横で岩に寝そべる直子の絵のような美しさ、草原に座った二人の間を抜ける風の音や草のそよぐ音。そういった数々の美しい場面が本当に素敵で、それらが手触りとして残っています。


菊地凛子は囁き声でも明瞭で魅力的なだけに、松山ケンイチの声が少し籠っていて、無感情な演技と棒読みの間くらいに感じた部分もあったけれど、シーンによってははっとするほど心のこもった台詞があったりして、やはりこの人は凄いなと思わされました。
これを観た時点では原作の記憶がほとんど無くなっていたので、そのあと読み直してみたうえでの感想です。