苦役列車

監督:山下敦弘
原作:西村賢太
出演:森山未來/高良健吾/前田敦子/マキタスポーツ/田口トモロヲ
制作:2012年日本
http://www.kueki.jp/index.html

苦役列車

苦役列車




森山未來がとても素晴らしかった。あの王子の輝きが微塵も感じられず、驚くくらい汚く変貌。外身の話ではなくて、内側から出てくる汚れ感が板についていて、もはや別人だった。
がさつな動作、幼児性が残ったような喋り方、自分を卑下しつつ他人を馬鹿にし、感情のまま生きて、人生を諦めているのかと思いきや希望も捨ててない。そんな主人公が森山未來によってクリアに印象づけられた。本当に良い役者さんだな、追わずにはいられないよ。


そして私が好きな、初期の山下作品の雰囲気が全面に出ているのも好ましかった。
リンダリンダリンダ」や「天然コケッコー」みたいな爽やか映画も悪くないけど、私はやっぱり「どんてん生活」「ばかのハコ船」「リアリズムの宿」あたりの、じめっとした閉塞感のなかに軽やかなユーモアが混ざっているような作品が好きだ。
今回のようなどうしようもない男を撮らせたら、山下監督の右に出る者はいないと思うよ。久しぶりの唐突な落下にはときめきを隠せない。


前田敦子も驚くほどよく馴染んでいた。時代に、画面の暗さに、山下監督の世界感に上手く同化した、ぴったりのヒロイン。途中で歌われたマキタスポーツ作詞作曲の歌がかなり良かったよ、流石マキタさんね。