リアリズムの宿

監督:山下敦弘
原作:つげ義春
出演:長塚圭史/山本浩司/尾野真千子
制作:2003年日本
音楽:くるり
リアリズムの宿

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邦画では一二を争う程好きな映画。だいぶ前に借りて、その時も何回か繰り返して見たのだけれど、どうしてもまた見たくて借りてきました。
やっぱり好きだ、山下監督の作品はほとんど全部好きで、でもその中でもいっとう愛している。
じめっとした日本海側の空や海、重い雪の中を湿っぽい男2人が時間を余して旅をする。どこを取っても辛気くさくて、それなのに画面の隅々までが愛おしい。役者2人の間の取り方も、構図としての空間の広さも、どちらもぽっかりと空いているのが良い。そこにくるりの「家出娘」が、まるで映画も音楽も同じ人が作ったかのようにぴたりとはまる。おかげで曲を聴くとどんよりした空を思い出し、しめっぽい雪空を見ると曲が流れ出す。
木下(山本浩司)の、いかにも友達がいなそうな中二的性格が笑えて、それによって坪井(長塚圭史)がやたらかっこよく見えてしまう。でも気が弱くて理屈っぽくて童貞で、若干きもい木下なのに、なぜか憎めない。
家出娘が登場すると、画面にはほんのささやかな色がつくよう。少しだけ楽しそうな3人。この映画はどこを取っても「少しだけ」だ。初対面の男2人で旅する事になっても、残金が僅かになっても酷く困ったりしない、そこそこ可愛い女の子が混ざり、ちょっとだけ気分が上がり、あっさり居なくなる。なんでもないようなストーリーなのに、ずっとある可笑しさ。山下監督が作り出す、そんなどーしょもない人間の可笑しさが本当に大好きなのです。