赤い文化住宅の初子

監督/脚本:タナダユキ
出演:東亜優/塩谷瞬
原作:松田洋子

赤い文化住宅の初子 [DVD]

赤い文化住宅の初子 [DVD]






最初はこのタイトルの響きと、なんとも言えないノスタルジックなフライヤーに惹かれて興味が沸いた作品。結局映画館では見られなかったけれど、逆にDVDでひっそりと見る方が適しているような気がする。
印象に残るのは、色褪せたブルーと音の余白。兄妹だけで生活をする初子の貧しさにこちらまで息苦しくなるのだけれど、そのくせなぜか閉鎖的な雰囲気よりも、開けた空間を感じる。どこまでも淡白に均一に解放された空間。空や海の視覚的な抜けと、言葉の少なさによる音の空白、そして並の暮らしとの接点である彼氏の存在がそう感じさせるのだと思う。彼がいる事、まだ若い事が、観ている側にも救いになる。
金銭的な問題で高校進学を諦める初子の気持ちは外へ発せられることはなく、常にじんわりと内側へ向かうが、その諦め方などは周りの平均的生活をする友達よりもあきらかに達観している。しかしそんな中でも女の子らしいワンピースを着てドキドキしたり、彼との結婚生活を想像してみる初子は、中学生らしいあどけなさを残していてとても愛らしい。
兄や担任教師、いなくなった父親なども良いスパイスになっていて、淡々としながらも飽きさせない。
主演の2人は本当に良い演技をしていて、東亜優という子は今回初めて認識したのだけれど、内面を映せる良い女優さんになりそう。彼の方が塩谷瞬だというのは、エンドロールで初めて気づいた。今まで持っていたやんちゃなイメージとは結びつかない、しっかりとした映画俳優だった。