人のセックスを笑うな

監督:井口奈己
原作:山崎ナオコーラ
出演:永作博美/松山ケンイチ/蒼井優/忍成修吾
制作:2007年 日本
http://hitoseku.com/

映画「人のセックスを笑うな」オリジナルサウンドトラック

映画「人のセックスを笑うな」オリジナルサウンドトラック






とても可愛らしくて切ないお話だった。
とにかくキャストが男も女も全員穏やかで優しく、誰も悪人が出てこない。ユリちゃんのやってる事は、描き方によってはかなりの悪人にもなりえるキャラクターなのに、この世界観の中では全然そんな風に思えなくて、むしろ「みるめ君みたいな人が現れたら、誰だって好きになっちゃうよね。」と共感させられる。それも永作博美だから成り立つのだろうけど。
そのみるめ君、これがもう卑怯なくらいかわいくて格好良くて参った。けど冗談を言って笑ったりつっこんだりする場面では、思いっきり故郷の青森訛りで話していて、それがリアルな感情を切り取っているようでたまらなく良い。ユリとみるめが話したり笑い合ったりしているシーンは、あまりにも2人の演技が自然すぎて、ドキュメンタリーでも見ているようだった。松山ケンイチはいつもかなり入り込んで役作りをするらしく、作品によって全く違う人物に見えるので、これからもいろいろな役にチャレンジしてくれるのを期待してしまう。
主演2人とはまた別に、この映画になくてなならない存在だったのが蒼井優。全編を通して一番感情が動かされたのは彼女による観覧車の中の演技で、何も考えずに優しく接するみるめに、好きと拒絶の入り混じったどうにもならない感情をぶつけるシーンは素晴らしかった。
それにしてもえんちゃんはすごい性格のいい子だよなぁ、自分が好きな人が20歳も年上の既婚者と付き合い始めたら、普通は「あんなおばさんやめなよ!遊ばれてるんだよ!」とか言っちゃうよね。最後にえんちゃんも幸せになれそうな予感で終わってくれて良かった。風景や光の色が綺麗で、校内の様子もこそばゆい。最後のクレジットを見たら、使ったのは女子美だったけど、どこも共通する匂いがあるな。
あとHAKASE-SUNによる音楽がぴったりで、思わずiTunesで「ANGEL」を購入。フィッシュマンズのカバーもとても軽やかで良かった。この映画はただ雰囲気だけでもっているのではなく、実力のある役者と優しい音楽とに支えられた贅沢な映画だと感じた。