月光の囁き

監督:塩田明彦
出演:水橋研二/つぐみ
制作:1999年日本
月光の囁き

月光の囁き ディレクターズカット版 [DVD]

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原作の漫画は読んだ事がないけれど、映画としては瑞々しくてとても良かった。とにかく主演のつぐみと水橋研二が素晴らしい。2人とも顔には幼さを残しながらも、倒錯した愛が強く伝わる卓越した表現力で、密閉されたような浮かんでいるような不完全世界を作り出している。
「つぐみの吸い込まれそうな目が気に入った」と、特典映像の対談で塩田監督が言っていたけれど、まさに。深くて強い目に何度もはっとした。そして水橋研二の持つ、柔らかくて芯のある表情や優しく繊細な声は、変態と罵られながらもなお相手を愛する男の子にとても合っていた。彼のおかげで拓也がただのストーカーではなくて、思春期のナイーブさを秘めた傷つきやすい男の子に見えた。
それにしても後半の深い沼底のような場面ばかりを観ていると、前半のじゃれあう小犬のような2人が幻だったような気がしてくる。あんなにキラキラとした顔で笑い合っていたに、と思ったら余計に辛くなってしまった。
でも1度観て、翌日もこの世界を引きずっていたので2度目を観たら、またぐっと印象が変わった。やっぱりこれは純愛の話だよね。最後の最後に紗月が「ギブスが取れたら海へ行こう」と言ってくれた事で、私まで救われた気がした。という事は、私は拓也に感情移入していたんだな。主役だからそれがあたりまえなのか、それとも紗月の方に感情移入しながら観る人もいるのか、女はだいたい紗月寄りなのかが、少し気になる。